1992年、日本カトリック司教協議会社会司教委員会は「国籍を越えた神の国をめざして」というメッセージを発表しました(2016年改訂)。当時、日本には外国人移住者が増えつつあった時期で、教会にも多くの外国籍信徒が訪ねるようになりました。日本人の信者は同じ信仰を持つ仲間が増えるこを喜ぶ一方で、異文化の受け入れにとまどいを感じていました。そのような状況の中でメッセージが発表され、日本の教会が難民移住移動者を友として受け入れ、その思いに寄り添うように呼びかけたのです。

それから25年以上がたち、外国人の置かれている状況は大きく変わってきました。国際結婚などで定住する人が増え、移住者の世代交代もすすむ中でリーマンショックが起こり、多くの人が帰国するという時もありました。近年は、政府が日本の労働力不足を補うため、外国人の受け入れ拡大の方針へ大きくかじを切ったこともあり、ベトナムやミャンマー等の若者が「技能実習生」として、日本各地で働いています。
日本の信徒が高齢化する中、ミサに参加するのはベトナムや、その他外国籍の若者たちが中心となっている教会も多いのではないでしょうか。それぞれの共同体における「国籍を越えた神の国」の実現を考えるきっかけにしていただきたいと思い、こちらのコーナーでは、全国の教会の「いま」とその取り組みについてお伝えしていきます。

【各地の取り組み~国籍を越えた神の国をめざして】

札幌教区 手稲(ていね)教会編

  1. 札幌市の東部、小樽市に隣接する地域にある手稲(ていね)教会では周辺で働く外国人技能実習生が集まり、ミサに与っている。
    侍者の奉仕者が現れると、その後もどんどん増え、現在朗読、共同祈願にもベトナム語が取り入られている。
    写真は2019年夏に教会の敷地でバーベキューをした時のもの。この日は、他の地域からもベトナム人が集まり、ゲームやダンスなどで大いに盛り上がった。

 

 

 

2.  ベトナム語聖歌の練習風景。クリスマスや誰かの送別会など特別な日にはベトナム語の聖歌を歌う。
もちろん、日本人も一緒に歌うが、リードしてくれるのは、ベトナム人青年たち。
手稲教会では、普段からベトナム語の朗読の後は「神に感謝」をベトナム語で日本人も一緒に唱えている。

 

 

 

  1. 労働組合の方に講師をお願いして、ベトナム人技能実習生向けの労働問題に関する学習会を開催。
    技能実習生が自分たちの置かれている状況を知るとともに、自分を守る術を学んだ。
    日本人にとっては、改めて技能実習生の現状を知る機会にもなった。

 

 

 

  1. 手稲教会に通っていたベトナム人男性が、先天性の病気による脳内出血で倒れ、今も入院している。
    ベトナムから兄が駆け付けたが、意識は戻らず、日本での医療滞在が続くことになる。
    教会の日本人信者を中心にお見舞いのローテーションを組み、毎日誰かが彼の元へ行き、声をかけている。
    意識がなくても彼を思い、祈る人々がたくさんいる。

 

 

  1. ベトナム人男性が入院した当初、お見舞いに集まった手稲教会のベトナム人青年たち。心は一緒という意味で、彼とお揃いのTシャツを着ている。
    手稲教会に通うベトナム人の一人、ヒエンさんは、「手稲教会は、寒い日に布団に潜り込んだような気持ちである。」と表現した。
    そして、日本人にとって、彼らはみんな自分の子どものようで、ハラハラして心配したり、笑わせてもらったり、家族の一員のようであると言う。