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第17回 国連が認定「入管長期収容」は国際法違反

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(カトリック新聞2020年10月18日号掲載)
日本にはさまざまな事情で暮らす、いわゆる「非正規滞在の外国人」が大勢いる。しかし、日本政府は彼らの個別の事情を考慮せず、既に「出入国管理及び難民認定法」(入管法)上の退去強制令書が出ていることを根拠に、法務省・出入国在留管理庁(以下・入管)の収容施設に無期限で長期収容したり、強制送還を行ったりしている。「非正規滞在の外国人」への人権侵害を考える連載第17回は、日本の入管が行っている長期収容等は「国際法違反」に当たると、国連の恣意的拘禁作業部会(ワーキンググループ/以下・WG)が認定し、9月末、日本政府に「意見書」を送付したニュースについて。

「恣意的拘禁」とは、①不公正な、そして②適正な手続きを踏んでいない、さらに③過剰な「拘束」、また「ある場所から自由に動けない状態に置くこと」を指す。
 国連のWGの認定を受けて10月5日、難民支援に尽力する鈴木雅子弁護士や駒井知会弁護士らが組織した「国連恣意的拘禁WG入管収容通報弁護士チーム」は、東京都内で緊急記者会見を実施。日本の入管での「無期限収容」等について、国連のWGが「恣意的拘禁」に該当する「国際人権法違反」だと認定したことを発表し、改善する必要性を世論に訴えた。
 国連のWGが、日本の入管収容分野に対して「見解」を出すのは史上初めてのこと。既に日本政府は、WGからの「意見書」を受理しているという。

難民認定申請者 国連に通報

 国連のWG、つまり「恣意的拘禁作業部会」は、国連人権理事会の「特別手続き」の一つで、国際的な人権基準に合致しない各国の人権状況を監視し、また人権侵害防止を行うことを目的に置かれたシステムだ。
 同WGには個人が直接「申し立て」(通報)をすることができ、WGは通報されたその国の意見も聞いた上で、「見解」を示すことができるのが特徴だ。
 今回の通報者は、本連載第1回で紹介したイラン人の難民認定申請者、サファリ・ディマン・ヘイダルさん(51)と、同第9回紹介のクルド人の難民認定申請者、デニズさん(41)の2人だ。両者は現在、「仮放免」(注)中だが、サファリさんの収容は通算約4年6カ月で、その間「2週間の仮放免」を3度経験させられた。デニズさんの収容は合計約5年に及び、
「2週間の仮放免」を2度経験。
 2人は過酷な長期収容で心身共に病んでいたにもかかわらず、さらに、短期間に「解放」と「再収容」を繰り返す「2週間の仮放免」によって、心理的不安と精神的重圧が増し、体調を悪化させた。そして精神疾患等の診断書を提出したにもかかわらず、収容され続けたのだ。2人は現在も通院が必要な状態が続いている。
 収容の根拠もなく、また収容の理由も示されない入管の非人道的な長期収容等について2人は「弁護士チーム」を通して昨年10月、国連のWGに通報書類を提出していた。

日本政府に「意見書」提出
 
サファリ、デニズ両氏からの個人通報を受けた国連のWGは、今年8月下旬の第80回会合で「見解」を採択し、日本の入管の長期収容等が「国際法に違反」だという「意見書」を、人権理事会が9月25日付で日本政府に送付した。
 国連のWGは、決定事項として、主に以下の「見解」を示している。
 「見解」ではまず、入管での長期収容によって、サファリさんとデニズさんの自由を奪ったことは、「世界人権宣言」と「市民的及び政治的権利に関する国際規約」(国際法)の違反に当たり、「恣意的拘禁」であると認定。
 そして、日本政府に対しては、「世界人権宣言」と国際法に照らし合わせて、入管法を見直すように要請。
 入管が2人に対して、恣意的に自由を剥奪したことに関しては、①完全かつ独立した調査と、②2人の権利を侵害した責任者への適切な措置、③救済措置として2人に賠償すること、さらに、④この「見解」を公表し、「見解」に対する日本政府の対応を広く情報として発信することなど―も要請している。
 また国連のWGは、入管収容について、無期限収容は許されないことで、収容期間の上限は法律で定めるべきであること。また、収容は最終的な手段にすぎず、収容する際は司法審査による法的根拠が必要だと指摘している。
 現在の日本の状況は、外国人を入管施設に収容する際は、司法審査は必要でなく、入管のいわば〝さじ加減〟で収容することが可能となっており、収容する理由や根拠を示す必要もないとされている。
 鈴木弁護士は国際法の〝重要度〟についてこう話す。
 「優先順位は、第1が『憲法』です。第2に『国際法』があり、その下が、入管法などの『法律』になっています。『法律』は、『国際法』の下にあります。ところが、日本の入管法は、『国際法』も『憲法』も飛び越えている状況です」
 
国際法に準拠した入管法改定案を

 今秋の臨時国会で、政府は入管法改定案を上程する予定だが、その中で、入管収容に関して、「司法審査の導入」や「収容期間に上限を定めること」を、従来通り〝拒否〟する方針だという。国際法に違反する「人権侵害」を土台にした入管法をこのまま維持し続ける構えなのだ。
 緊急記者会見で、サファリさんはこう話した。
 「来日して30年、入管に収容されている約4年間は、人生で一番みじめだった。『もう死ぬ』と何度も思った。日本でこんなことが起きていることが信じられなかった。入管に収容されている人の多くは難民(認定申請者)です」
 来日13年で、日本人の妻もいるデニズさんもこう訴えた。
 「収容された外国人は、入管職員からのいじめに遭っている。自殺した人も見た。収容された外国人を、早く家族の元に帰してほしい。皆(被収容者)のことを思うと涙が出てしまう。全員が(入管収容施設から)出てくることを心から願っています」
 日本政府は、国連のWGの「見解」(「意見書」)にどう向き合い、入管法改定案にどのように反映させるつもりなのだろうか。
 【注】「仮放免」とは、在留資格が得られず「非正規滞在」となった外国人に対して、入管が入管収容施設の外での生活を認める制度。

10月5日の緊急記者会見に出席したデニズさん(中央右)とサファリさん(中央左)。(写真提供=都留孝子さん)

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