難民とは?
「難民」とは、人種、宗教、国籍、政治的意見等を理由に迫害を受ける可能性があるため、国籍国外に逃れた人々のことです。国連の「難民の地位に関する条約」では、難民を次のように定義しています。「人種、宗教、国籍もしくは特定の社会的集団の構成員であること又は政治的意見を理由に迫害を受けるおそれがあるという十分に理由のある恐怖を有するために国籍国の外にいる者であって、その国籍国の保護を受けることができない者又はそのような恐怖を有するためにその国籍国の保護を受けることを望まない者、及び常居所を有していた国の外にいる無国籍者であって、当該常居所を有していた国に帰ることができない者又はそのような恐怖を有するために当該常居所を有していた国に帰ることを望まない者」(難民条約第1条A2)
「難民」と聞くと、多くの方々は、戦争や紛争の起きている貧しい国を想像するのではないでしょうか?そして、「日本とはあまりかかわりがないこと」と、考える方もいるかもしれません。しかし、現実はそうではありません。私たちの暮らすこの日本にも、毎年「難民」としての庇護を求める多くの人々がやってきています。しかしながら、日本政府が「難民」として認定する人はごくわずかにすぎません。他の先進諸国が、万人単位で毎年難民を受け入れている中、2017年度に日本で難民申請した人は19,629人、一方で日本政府が難民と認定した人はわずか20人でした。この難民認定率0.01%は、先進国の中で驚くほどの低さです。
また、難民認定の審査には長い時間がかかります。難民申請中、在留資格も安定せず、多くの人々が生活困窮に苦しんでいます。また、不認定となった後も、本国には帰れないことから再申請を繰り返し、10年以上の長期間にわたり、日本での生活を耐え忍んでいる人々も少なくありません。非正規滞在となり、入管収容施設に収容されたまま難民申請の手続きをせざるを得ない人びともいます。このように苦しい状況に置かれた難民申請者を支援するさまざまな団体があります。日本カトリック移住移動者委員会は、こうした教会内外の団体と連携協力しています。
移住者とは?
国境を超えた移住者(移民)の正式な国際法上の定義はありませんが、法的地位に関係なく本来の居住国を変更した人々を国際移住者とみなすことに、多くの専門家が同意しています。3カ月以上12カ月未満の移動を短期的または一時的移住、1年以上にわたる居住国の変更を長期的または恒久移住と呼んで区別するのが一般的です。
日本では1980年代始めには、日本に植民地支配された韓国・朝鮮や中国の一部から日本に移り住むことを余儀なくされた人々とその2世3世を中心に80万人の外国籍者が日本で暮らしていました。1980年代後半からは、アジアやラテンアメリカ諸国などから日本に働きにくる労働者や、国際結婚のために定住する人びとが増加しました。2017年末の統計では、日本の在留外国人数は252万人を超え、外国人労働者数も128万人を超えています。また国際結婚などで生まれる子どもたちの数も増え、現在では、日本で生まれる30人に一人が外国にルーツをもつ子どもたちになっています。このように、日本社会はすでに多民族多文化の社会になっているのです。日本のカトリック教会内においても、1990年代からフィリピン、ラテンアメリカなどのカトリック諸国からの信徒が急増し、日本の教会の大切な一員となっています。
他方で、日本に移住、定住する外国人は、長い間日本人と同等の権利を保障されず、社会の中でも差別や人権侵害にさらされてきました。使い捨て労働力として雇用の調整弁にされる外国人労働者や、地域や家庭の中で孤立し、差別やDVなどの被害に苦しむ国際結婚の女性、学校や社会から疎外されいじめに苦しむ外国にルーツをもつ子ども、収容され退去強制の恐怖におびえる非正規滞在の外国人など、さまざまな問題が社会の中で起きています。また、教会内でも多文化・多国籍共生の共同体づくりのための試行錯誤が続けられています。
日本カトリック難民移住移動者委員会では、日本の教会における多文化・多国籍共生の課題に各教区と連携して取り組むほか、日本社会の移住者の人権状況を改善するため、外国人支援の市民団体などとも連携してアドボカシー活動に取り組んでいます。
移動者とは?
観光目的の旅行者、航空/船舶従事者、その他の仕事のために短期的に日本を訪れるすべての人々が含まれます。法務省の統計によると2017年に日本に入国した外国人は2743万人にものぼります。日本難民移住移動者委員会では、この中でも海上の「移動者」である船員への司牧、いわゆるAOS(Apostleship of the Sea:船員司牧)を大きな活動と位置づけ、日本の各港で支援を続けるスタッフとともに船員への支援の道を広げています。