法務省入国管理局は、2018 年2 月8 日、ベトナム人47 人をチャーター機で一斉送還しました。チャーター機による一斉送還は、2013 年7 月6 日(フィリピン人75 人)以来、7 回目になります。
送還を望まない外国人の強制送還について、私たちはこれまで、さまざまな人権人道上の問題を指摘してきました。過去の6 回のチャーター機による一斉送還においても、被送還者の中には、日本に配偶者や子などの家族がいる人、15 年以上の長期にわたり日本に定着している人、難民申請したものの不認定とされた庇護申請者など、様々な事情を抱えて母国に帰ることができない人たちがいました。彼・彼女らが突然の強制送還後、生活の基盤もなく支援もないままに送還先に放置されている実態も明らかになりました。私たちはまた、被送還者の選定基準の不透明さや送還プロセスにおける人権侵害についても問題指摘をしてきました。しかしながら、日本政府はこうした問題指摘や抗議にも誠実に答えることなく、6回目のチャーター機による一斉送還が強行されました。
法務省によると、今回の一斉送還では、8 歳から49 歳までの男女47 人が送還され、そのうちの40 人が送還を望まない人でした。その中には、日本に15 年以上の長期滞在者が4 人含まれ(最長者は滞在21 年5 ヶ月)、また日本に法律婚をした家族を残している人が12 人、日本で庇護を求め、過去に難民申請をしていた人が24 人、未成年者が2人含まれていたとのことです。
また、送還を望まない人の中には、退去強制令書発付処分の告知から6 ヶ月未満の人が23 人、難民不認定処分後、異議申立棄却又は却下処分の告知を受けてから24 時間以内の人が16 人も含まれていました。これらの人びとを送還することは、憲法第32条で保障される「裁判を受ける権利」を剥奪するものであり、また、裁判所による最終判断が下されていないにもかかわらず、難民である者もしくは帰国すれば拷問等受ける可能性のある者を送還する点で、難民条約第33 条及び拷問等禁止条約第3条の定める「ノンルフールマン原則」に反するものであり、憲法上、国際条約上、到底許されるものではありません。
法務省はまた、送還のプロセスにおいて、「送還を安全かつ確実に実施するため、必要最低限の手錠を使用した」と説明しています。今回の送還においては、前回2017年2 月のタイへの一斉送還の時と同様に、送還希望者にすら手錠が使用されたという事実が明らかになりました。
手錠の使用は、自由権規約7 条及び拷問等禁止条約が禁止する品位を傷つける取扱いに当たります。このような人の身体に対する直接の強制力の行使は、必要最小限でなくてはならないことは当然であり、法務省の内部通達においても、逃走、暴行又は自損等護送任務の遂行に支障を来すおそれがあると認められるときに限って手錠などの戒具使用が可能とされています。被送還者全員について、これらのおそれが一律に認められるというのは想定し難く、まして、送還を希望していた人について、これらのおそれがあるとは考えられません。今回の一斉送還において、不必要、不相当な人権侵害が行われたものであり、このような手錠使用の運用実態は、改められる必要があります。
私たちは、上記の理由から、2月8日に実施されたチャーター機によるベトナムへの送還に抗議すると共に、繰り返されるチャーター機等による強制送還に強く抗議します。私たちは、日本に暮らすすべての人びとの人権が等しく尊重される社会を求める立場から、送還を望まない人を強制送還するのではなく、彼・彼女らの家族との結合や日本での定着性、保護の必要性などが十分に考慮され、合法化が検討されることを強く望みます。
さらに、航空会社においては人権を尊重し、人権侵害に加担しないという企業の社会的責任を果たすよう求めます。
2018年2月28日
特定非営利活動法人 移住者と連帯する全国ネットワーク
全国難民弁護団連絡会議
難民・移住労働者問題キリスト教連絡会
日本カトリック難民移住移動者委員会
カリタスジャパン
特定非営利活動法人 難民自立支援ネットワーク
特定非営利活動法人 名古屋難民支援室
無国籍ネットワーク
RAFIQ(在日難民との共生ネットワーク)