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1 入管法改定案に反対し、衆議院可決に抗議します

入管法改定案が、通常国会に提出され、5月9日、衆議院で可決されました。衆議院採決に抗議し、まもなく開始される参議院において廃案とすることを求めます。

2 人道に反し、一昨年廃案になった入管法改定案

本法案は、政府が2021年の通常国会で廃案になった入管法改定案と、ほぼ同じ内容であり、衆議院で行われた一部修正を経ても、多くの人の命や人権を脅かす、以下の重大な問題を含んでいます。

  • 低い難民認定率に改善策をとらない一方、難民申請者の送還を可能にし、迫害を受ける恐れがあるのに難民を本国に送り返す。
  • 送還忌避罪を創設し、帰国できない事情があるため在留を希望する人に刑罰を加える。
  • 監理措置制度により、在留資格のない外国人の監視を支援者らが引き受けない限り解放せず、無期限の長期収容制度を存続させる。
  • 在留特別許可制度の縮小と、問題のある判断要素の法定で、同制度による救済を狭める。

これらの問題点を、国連人権理事会の、移民の人権に関する特別報告者、恣意的拘禁作業部会、宗教または信条の自由に関する特別報告者らによる日本政府宛共同書簡(4月18日付)も指摘し、法案の見直しを求めました。国際法・政治思想・社会学等の研究者425人も、4月17日付で反対声明を発表しました。衆院法務委員会における可決に対し、多数の新聞社説が批判をし、また私たちが呼びかけ、実施中の反対署名には、5月8日時点で198,557筆という多数が寄せられ、2年前にもまして市民の批判の声が広がっています。

3 審議でも問題点が明らか

衆議院法務委員会の審議でも、2021年3月に名古屋入管に収容されていた女性ウィシュマさんが亡くなった重大な事態について、あたかも再発防止に資する法案であるかのような説明をしていた政府委員も、「監理措置」制度の下でもウィシュマさんが解放されていたかどうか判らないとしか答えられませんでした。
難民の保護についても、3回目の難民認定申請の審査請求で難民認定された例があることが明らかになり、3回目以降の申請者の送還を可能とする法案の危険性があらためて指摘されています。
さらに、入管庁の法案資料「現行入管法の課題」で、2021年4月21日に行われた衆議院法務委員会における参考人となった難民審査参与員の1人が、約2000件について対面で聞き取りをしたと述べた上「難民の認定率が低いというのは、分母である申請者の中に難民がほとんどいないということを、皆様、是非御理解ください。」と発言したことを引用して、難民認定率の低さを正当化していました。しかしながら、2023年4月21日に衆議院法務委員会に参考人として出席した2名の現役難民審査参与員は、いずれも年間処理件数50件程度と述べていました。参与員制度は2005年に施行されました。2021年までの16年間時点で2000件を担当したということは、平均すると年間125件、他の参与員の2.5倍です。あまりに不自然であり、少なくともこのような件数の対面聞取りによる慎重審査は不可能です。2回目までの難民認定申請がずさんな処理をされているのであれば、送還停止効の制限が難民にとって危険であることが、さらに明らかです。

4 犠牲を繰り返さないために、さらに多くの反対の声を

与野党間でなされる修正協議のように、政治に譲歩は必要なこともありますが、人権が蹂躙されるのを前にして、譲歩の余地があるのでしょうか。人権が侵害されている人たちにとって、さらに侵害しようとする入管庁への譲歩とは何を意味するのでしょうか。人権条約に違反している政府との間で譲歩することは、日本にとって何を意味するのでしょうか。
移民、難民の人たちに対する非人道的な政策はやめさせるべきであり、まして悪化を許すべきではありません。
私たちは、引き続き、入管法改定案の成立に反対します。非人道的な収容による犠牲を繰り返させず、苦境にある難民等の人たちの排除をさせないために、さらに多くの市民の皆さんに、私たちと共に法案に反対してくれるよう呼びかけます。

2023年5月9日

公益社団法人アムネスティ・インターナショナル日本
特定非営利活動法人移住者と連帯する全国ネットワーク
全国難民弁護団連絡会議
日本カトリック難民移住移動者委員会
入管問題調査会
全件収容主義と闘う弁護士の会 ハマースミスの誓い
特定非営利活動法人 ヒューマンライツ・ナウ